瀬戸内の旅 その
『直島 ベネッセホテル』
2011.10.31

直島は今、美術(芸術)の島になっている。宮浦港にフェリーが着くと、旅人は路線バスに
並ぶ。目指すは『地中美術館』や『家プロジェクト』だ。到着したのは日曜日(10/23)の夕刻である。

旅人のどの顔にも多少の焦燥感があるのは、(しっかり下調べすればよかったのだが)翌日の月曜日は何処も休館日だったのだ。そして施設が閉館するのが、揃いも揃って17時から17時半なのだ。15時にバスに乗込んだ旅人の焦りもお解りいただけるだろう。ただ、幸いなことに島が小さい。バスで15分ほどで『家プロジェクト』の中心に出る。ここは焼き杉板の家が並ぶ旧い町並みで、家そのものを芸術品にしてしまった一角なのだ。

訪れるのは5ヶ所。古い町並みにデジタルを融合させた家や、前衛的なデザインを駆使した家が点在する。チケット片手に疾走する。時間の余裕があれば、街そのものが『時が止まった芸術』のようなのだから、ゆっくりと歩きたい。

私たちは2ヶ所のプロジェクトで断念し、再度バスに乗車し、『地中美術館』に向かった。ここは、あの安藤忠雄さんの建物で有名である。全ての展示室が地中にある。そして、所々に射し込んでくる瀬戸内の自然光。あの名画『睡蓮』も、夕方の自然光の中にあったのだが、夕闇迫る中の鑑賞は辛い。ここは晴れた昼下がりにもう一度訪ねるべきだ。

最も感動したのがジェームス・タレムだった。何も無い緩やかな段差がある部屋に入ると、正面に霧のような風景が広がる。そこにゆっくりと進む。自然光がどこからともなく入ってきているのだろう。何とも言えない『霧の中』を進んでいる不思議な感覚だ。そして振り返ると背景がオレンジ色に見えるのだ。でも、そこに戻ると白い壁だけがある。照明の魔術なのだろうか…ここはお薦めしたい。美術館そのものが、まるで未来を描いた映画のような感覚だった。

18時。最初のホテル『ベネッセホテル』にチェックイン。ベネッセ、そうあのベネッセだ。進研ゼミから始まったベネッセは、いまや幼児教育の幅広い範囲から高齢者の介護施設まで、
まさに『揺りかごから…』を行く大きなグループに成長遂げた企業だ。直島は厳密には香川県だが、岡山県からのほうが近い。ベネッセの創業は確か、福武書店だ。創業の地が岡山だから、地元なのだ。直島にこのホテルがあるのは頷ける。島の雇用にも多いに役立っているのではないだろうか。

そしてこのベネッセホテルは、ホテルそのものが美術館なのだ。
安藤さん設計で、ホテルの至る所に絵画、彫刻などが並んでいる。ホテル南側の芝の向うが瀬戸内海なのだ。寄せる波は静かだ。沈む夕日の中、宿泊者が海沿いを歩いている。とても静かだ。ホテルの美術館は22時まで開いているので、アンディ・ウォーホルの作品などを鑑賞し、夜が更けてゆくのを愉しんだ。

これといった大作は無いのだが、この美術館ホテルの100年先が楽しみだ。目利きが作品を少しずつ揃えてゆくのだろう。まだまだそこいら中に空間があるのだから。

海と緑。昨日まで身体の芯にあった疲労感が無くなっていた。

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