瀬戸内の旅 その
金比羅参り
2011.11.01

直島から9時過ぎのフェリーに乗って高松に向かう。フェリーに吹く海風に肌寒さはない。およそ1時間、瀬戸内の島々を縫うようにゆっくりと進む。前日、ホテルから漁り火のように光っていたのが高松市内の街の灯りだった。まるで泳いでゆけるような近い感覚だったのだが、それなりに遠い。

フェリー乗り場から高松駅に。でも、高松市内は香川県の中心のはずなのに、アーケード街が寂しい。地方都市はどこも商店街に元気が無い。都市であればあるほど、昔の賑わいの残り香があるようで、尚更寂しさを感じてしまう。

以前観た映画『書道甲子園』の舞台もこの辺りだったのではないかと、想う。そして『うどん棒』という讃岐うどん店で昼食を摂る。何処もかしこもセルフの店が並ぶ中、ここは昔からのうどん店だった。瀬戸内名物のジャコ天が乗ったシンプルな讃岐うどん580円は、期待を裏切らなかった。昼過ぎ、琴平行きの各駅電車に乗車。回復した体力が先きを急がせる。

午後2時前、琴平到着。ホームから宿泊先の『琴平参閣』が見える。金比羅さまの門前町だ。高松市内より賑わいがある。皆、一様に杖を持っている。若い子も多い。四国随一が頷ける。

3時チェックインなので、ホテルに荷物を預け、そのまま金比羅さんに向かう。信号を右に折れると参道だ。杖を借りてくるのを忘れたが、まあ、ままよと昇り始めた。785の石段を昇る人、下る人が行き交う。両側のお店から『飴売り』の声がかかる。

石段脇に『駕篭』があり、上まで連れて行ってくれるのだそうだが、かなりの年配の方々も杖をつきながら昇ってゆくのだ。駕篭に乗るわけにいかないだろう。一歩一歩、確かめるように昇る。あまり「あと○○段」などと数えないほうがいい。逆算すると戦意を失う。

途中で、金比羅歌舞伎の金丸座に立ち寄り、再び昇る。意外に昇れる。息切れも、ふくらはぎや膝に張りもない。金丸座鑑賞の時間を入れて1時間半で785段を昇り切った。金毘羅さんにご挨拶し785段を下って参道入り口に戻ったときに、初めて気付いた。シャツが汗で重くなっていたのだ。そして周囲にフットマッサージの店舗が並んでいるのに気付いた。
足湯の喫茶店もあった。行くときには全く目に入らなかったものが、次から次に目に飛び込んでくる。

旅館の温泉に浸かったときの達成感。誰かに伝えたい『785石段制覇』の話。知人にメールを打ち続けた。はた迷惑だったろうに。

清水の次郎長が石松に金比羅詣でを言いつけたのも解る。

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